「たかが、いびき」と侮っていると、命に関わるケースがあることを別項でお伝えしました。
ところで、この「いびき」というのは、一体どういう現象なのでしょうか。
「いびき」の正体を探ってみましょう。
大いびきをかく原理
就寝中、「いびき」をまったくかかない人がいる一方で、「大いびき」をかく人がいます。周囲の「大いびき」に睡眠を妨げられた経験のある方も少なくないでしょう。
さて、そもそも「いびき」はどうして生じるのでしょうか。
鼻や口から吸い込まれた空気は通常、スムーズに肺まで到達します。したがって目が覚めているときの呼吸音は、近くにいる人でもほとんど聞き取れません。
ところが、何らかの原因によってこの空気の通り道(気道)が狭くなっていると、空気の流れが乱れて音が発生します。リコーダーが鳴るのと同じ原理です。
また、空気が口の中の奥の天井(軟口蓋)やのどちんこ(口蓋垂)を震わせて音を出すことも
あります。そして、こうして発生した音(いびき)が、のどや鼻に共鳴して拡大されるため、
「大いびき」となるのです。
このような原因によって気道は狭くなり、いびきが出ます。
- 肥満
- 舌が大きい
- 下顎が小さい
- 首が太くて短い
- 口蓋扁桃(扁桃腺)や咽頭扁桃(アデノイド)が大きい
- 口蓋垂(のどちんこ)が大きい
- 鼻が詰まって、口呼吸をしている
- 口の周りの筋肉(口輪筋)が弱い
- 舌やのどの筋肉が弱い
このような人はいびきをかきやすいと言われます。
- 太ってのどに脂肪がつくと、気道が狭くなりやすいのです。
- 気道が狭くなって、いびきをかきやすくなります。
- 舌やのどの筋肉が弱くなるので、就寝時に仰向けに寝ていると舌が口の奥の方に下がって気道が狭くなります。
- お酒でのどがむくむためです。酔って眠ると、のどのむくみによって気道が狭くなり、いびきを招きます。
いびきは、成人男性に特有のものと思われがちですが、女性や子どももいびきをかきます。女性の「いびき」は、顎が小さいことが原因となることが多く、子どもの場合は、鼻の病気によって鼻が詰まって口呼吸になっていたり、アデノイドが通常より大きくて気道が狭くなり、いびきをかくケースがよく見受けられます。
普段はほとんど「いびき」をかかない人でも、特別な事情に置かれると「いびき」をかくことがあります。例えば、下記のような場合です。
激しい運動や重労働をした場合
激しい運動や重労働を長い時間続け、その疲労が溜まってくると、「いびき」をかくことがあります。疲労を回復しようとして、睡眠が深くなるためです。
深い眠りに入ると、舌やのどの筋肉の緊張がほどけるので、舌がのどの方に下がり、気道が狭くなることによって「いびき」をかきやすくなるのです。
深酒をした場合
深酒をしたときにだけ、「いびき」をかく人がいます。
アルコールには体に水分を貯める働きがあるので、お酒でのどもむくみます。このむくみによって気道が狭くなるために「いびき」が出るのです。
ホテルに泊まった場合
家ではそんなことないのに、旅行や出張でホテルに泊まったときにだけ「いびき」をかく人がいます。ホテルの部屋は概して空調設備が働いて湿度が低く、鼻やのどが乾燥しやすい環境になっています。鼻が乾くと鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸になりがちです。口を結んでいるときは、舌は上顎と下顎に挟まれていますが、仰向けに寝て口を開けると、舌がのどの方に下がって「いびき」を招きます。