睡眠時無呼吸症候群の治療には、生活習慣を改善が肝心です

日常生活において、以下のような改善を心がけましょう。

減量

肥満になると、首周りにも脂肪がつき、気道を閉塞させてしまいます。減量するだけで無呼吸が大きく改善する場合があります。


飲酒の制限

アルコールは気道の筋力を低下させるとともに気道を狭くするので、無呼吸を悪化させてしまいます。特に、就寝前の飲酒は控えましょう。

睡眠薬・精神安定剤などの制限

アルコールと同様、睡眠薬や精神安定剤も気道の筋力を低下させ、気道を狭くします。こうした薬物の服用は、医師と相談の上、できるだけ控えたいところです。

禁煙

タバコの煙は、のどや気道の炎症・腫脹を引き起こし、無呼吸を悪化させますので、禁煙しましょう。当院では禁煙外来を設けておりますので、お気軽にご相談ください。

その他

そのほかには、横向きに寝るのも効果があります。いびきのある方には、低すぎる枕も、高すぎる枕も好ましくありません。ご自身に合った枕を作りましょう。


生活習慣の改善が必要な理由

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、放置できない病気です。生命に関わる様々な病気と強く関連しているからです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって睡眠不足が続くと、交感神経の働きが活発になり、アドレナリンがたくさん分泌されて、高血圧になるリスクが高まります。そして、高血圧は、心筋梗塞や心不全、脳卒中を招く原因になります。

また、睡眠時の無呼吸・低呼吸は、胸腔内の圧力を弱め、心臓に戻ってくる血液の量が増えて心臓にかかる負担が増大します。
特に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重症患者さんでは、心血管系の病気になる確率が実に約3倍に跳ね上がることが知られています。
さらに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、インスリンの働きを悪くし、糖尿病を併発したり、すでにある糖尿病を悪化させたりします。睡眠状態の改善によって血糖値が下がった、とする報告もあります。

さて、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の要因の一つに「肥満」があります。
逆に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)になると新陳代謝に異常をきたすため、「肥満」になりやすくなります。つまり両者は、悪循環を起こしやすい関係にあるのです。
ある報告では、10%体重が増えると睡眠中の無呼吸・低呼吸が32%増加し、体重を10%下げると無呼吸・低呼吸が26%軽減するとしています。


そのため生活習慣の見直し・改善をし、
「睡眠時無呼吸症候群」と「肥満」、
ひいては生活習慣病とその合併症を同時に解消・予防することが大切なのです。



原因となる生活習慣の改善

食事の見直しをする

肥満の方はのどにも脂肪がついていて、痩せた人よりのどが狭くなっています。体重を減らすと、のどについた脂肪も落ちるため、気道が広がります。

極端な例ですが、胃を小さくする手術をしたら、 体重(kg)÷身長(m)の二乗で表すbody mass index(正常値:18.5~25)が、46から35に減るとともに、「習慣性いびき」の割合も82%から14%に減少した、という報告があります。

肥満の改善のためには、まず食事の見直しをしましょう。

  1. 1.塩辛いものや甘いもの、炭水化物を摂り過ぎていないか?
  2. 2.毎食、野菜を食べているか?
  3. 3.魚より肉を食べることが多くないか?
  4. 4.揚げ物やバター、生クリーム、チーズを使った料理を食べることが多くないか?

以上の点をチェックしながら食事をすると良いでしょう。
また、サラダやスープなど低カロリーのものを先に食べ、高カロリーのものを後回しにするのもお勧めです。
サラダやスープである程度おなかが満たされると、高カロリーのものを必要以上に食べずに済みます。

日々の運動を心がける

それと並行して、運動を心がけることも必要です。
太っている方は、往々にして運動が苦手なものです。運動と言っても、スポーツ選手がするような運動をしてくださいと言うのではありません。毎日、気負わずに続けるには、通勤や外出時に一駅手前で降りて歩く、エレベータやエスカレータを使わないなど、「すぐにできること」から始めるのがコツです。


深酒を慎む

アルコールはのどをむくませるので、普段「いびき」をかかない人でも、お酒を飲んだ夜は「いびき」をかくことが少なくありません。
お酒を飲む量が多くなると、アルコールを分解するのに時間がかかりますから、必然的にのどがむくんでいる時間も長くなります。
現代社会では、お酒は社交の一端を担っていますし、ストレス発散の手段にしている方も多いかとは思いますが、ほどほどに嗜み、深酒は慎みたいものです。

鼻の乾燥を防ぐ

通常、鼻の中はいつも湿っていますが、乾燥すると空気の気流が乱れて「いびき」が生じます。加湿器を使って部屋の湿度を上げても上手くいかないようなら、鼻の乾燥を防ぐ市販の点鼻スプレーを利用するのも効果的です。

鼻づまりを治す

現在、鼻腔を広げるアイテムがいろいろ販売されています。鼻腔を広げるアイテムは、大きく分けて、鼻に貼るテープ類と、鼻の穴に入れて使うタイプの2種類があります。テープを貼っても皮膚がかぶれない方は、ドラッグストアなどで売られているプラスチックのバーが付いたテープがお手軽です。鼻の通気率が30%以上も向上すると言います。鼻の穴に入れて使うタイプは、プラスチックやシリコンでできたものの両端を小鼻に入れて、製品の持つ弾力性を利用して小鼻を広げるしくみになっています。

口を開けて寝ない

睡眠中に口を開けていると、舌がのどの奥に下がり、「いびき」をかきやすくなります。睡眠中は自分でコントロールできないので、鼻づまりの無い方なら、就寝前に、テープを口に軽く貼るのも良い方法です。

寝具や寝る姿勢を見直す

柔らかいふかふかの枕やベッド・敷布団は、高級感が溢れていて気持ちがいいものですが、「いびき」をかく方は避けたほうが良いでしょう。
仰向けに寝て「いびき」をかくと、呼吸が苦しくなるので、通常は自然に寝返りを打ちます。

ところが、ふかふかの枕やベッド・敷布団では、寝返りが打ちにくくなってしまいます。
すので、枕やベッド・敷布団は、寝返りしやすい程度の硬さのものがお勧めです。近頃では、「いびき」に関する意識が高まってきて、「いびきセンサー」付きの枕も市販されています。
また、枕が高いとあごが引けて、のどが圧迫されるので「いびき」をかきやすくなります。そこで、上半身全体を15度ほどの勾配で上げると、のどが圧迫されにくくなるとともに、顔のむくみが減り、舌がのどの奥に下がりにくくなるため「いびき」を予防します。

寝姿も「いびき」に関係します。
仰向けで寝ていると、舌がのどの奥に下がってしまい、気道が狭くなるので「いびき」をかきやすくなります。
そこで、横向き寝やうつぶせ寝が勧められています。横向き寝やうつぶせ寝の習慣が無い方は、抱き枕を使うと、姿勢が安定して眠りやすくなると言われます。

また、クッションを腰につけ、嫌でも仰向けになれないようにした横向き寝専用グッズや、うつぶせ寝専用の枕も販売されています。興味のある方は、専用の寝具売り場を覗いてみてはいかがでしょうか。